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project

プロジェクトテーマ デジタル技術と地域社会―地方私立大学による地域貢献―
プロジェクト代表 中西 孝平
プロジェクトメンバー 中西 孝平、川﨑 竜太、辻慎一郎、福島 豪、山川 仁子、稻留 直子

今年度の共同研究プロジェクトは、デジタル技術、とりわけAIの急速な発展が社会にもたらす変化を踏まえ、各専門分野における既存の知識・技能・実践の再編と新たな展開のあり方を明らかにすることを目的とするものである。20世紀初頭にカレル・チャペックが描いた「ロボット」に象徴されるように、技術革新はしばしば人間の仕事を代替するものとして捉えられてきたが、歴史的には新たな技術が新たなスキルや産業を生み出し、社会の発展を支えてきた側面も有している。近年のAIは、大量のデータをもとに文章生成や画像生成、意思決定支援を行うなど、従来のデジタル技術とは異なる特性を持ち、社会に大きな影響を及ぼしている。一方で、その活用は人間の判断や活用能力に依存する側面も大きく、既存の業務を単に代替するのではなく、求められるスキルに変化をもたらし、それを発展させる契機となるものと捉える必要がある。

本プロジェクトでは、6名のメンバーが、経営学、地域福祉、学校教育、保育、日本語教育、公衆衛生看護学分野といった多様な専門分野において、AIの導入がもたらす変化と新たに生じる実践的課題を多角的に検討する。これにより、各分野における新たな知見を提示するとともに、鹿児島県域におけるAIの影響を明らかにする。さらに、これらの検討を通じて、AI社会において地方私立大学が地域に対して果たしうる役割とその具体的な貢献のあり方についてその具体的な貢献のあり方を提示する。

「大島紬産業におけるDX導入を通したイノベーション」

経済学部 教授 中西 孝平

本研究は、鹿児島を代表する伝統産業である大島紬を対象に、デジタル技術(DX)の導入を通じたイノベーションの可能性を検討するものである。生活様式の変化に伴い、伝統産業の市場規模は縮小してきたが、高級路線の確立や新需要の開拓などを通じて一定の市場を維持してきた。一方で、業界構造の特性により環境変化への対応が硬直化している点が課題として指摘されている。近年では、一部企業においてDXの推進により技術者不足の克服や生産体制の高度化が進められており、伝統と革新の融合が進みつつある。しかし、和装文化の縮小を背景として、DXの導入は単なる効率化にとどまらず、製品価値の再定義を伴う変革となっている可能性がある。本研究では、先行研究のサーベイを通じて分析枠組みを整理するとともに、大島紬関連企業へのインタビューおよび現地見学を実施し、デジタル技術導入の実態を把握する。これにより、伝統産業におけるイノベーションの諸相を明らかにする。

「関係人口拡大に向けた地域マネジメントの実践」

福祉社会学部 准教授 川﨑 竜太

本研究は、関係人口創出に向けた地域マネジメントの実践について、デジタル技術を活用した持続的な地域貢献の仕組みの構築を検討するものである。人口減少社会においては、移動困難者への対応、産業の担い手不足、地域のつながりの希薄化など、地域課題が複雑化している。こうした状況の中で、地域外から多様に関わる「関係人口」の創出と、地域を支える人材の育成が重要な課題となっている。近年では、デジタル技術の活用により地域参加の新たな形が模索されており、地域と外部人材の接点創出に向けた取り組みが進みつつある。本研究は、こうした背景のもと、デジタル技術を活用して「地域への参加」を促し、「地域の共感」を得て、持続的な地域貢献システムの構築を目指すものである。しかし、単なる参加機会の提供にとどまらず、継続的な関与につなげる仕組みの構築が求められている。 本研究では、関係人口の対象として「防災教育」や「福祉人材」を取り上げ、先行研究のサーベイを通じて分析枠組みを整理する。そのうえで、デジタル技術を活用した「防災教育プログラムの開発・実践・評価」、「地域互助システムの活用・評価」等を通して、関係人口の創出と人材育成を両立する地域マネジメントのあり方を明らかにし、地域社会の持続的発展に向けた実践的示唆を得ることを目的とする。

「離島・へき地における学校DXの推進と生成AI活用を通じた学校経営の充実に関する研究」

福祉社会学部 准教授 辻 慎一郎

本研究は、離島・へき地における学校DXの推進と生成AIの活用を通じた教育の質の向上を対象に、持続可能な学習環境の構築に向けた実践的知見の導出を目的とするものである。鹿児島県の離島地域では、小規模校や複式学級の割合が高く、限られた教員数による学校運営と多様な学びの機会の確保が大きな課題となっている。一方で、ICTを活用した遠隔合同授業や生成AIの導入は、既存の業務を単に代替するのではなく、教育実践をさらに発展させる契機として期待されている。これらは校務の効率化による学校経営の改善に加え、個別最適な学びと協働的な学びの充実を支える手段として期待されており、地理的制約を超えた新たな教育実践が広がりつつある。しかし、これらの取り組みを学校経営と教育実践の双方において効果的に定着させるためには、その具体的方策と効果の検証が求められている。 本研究では、瀬戸内町および徳之島町を中心にフィールドワークを実施し、教職員へのヒアリングやアンケート調査を通じて学校経営および教育実践の現状と課題を把握する。さらに、生成AIを活用した校務支援および授業改善に関する実践的支援を行い、その効果を検証する。これにより、教員の業務負担軽減と児童生徒の学びの充実を両立する学校経営モデルを明らかにし、離島地域における持続可能な教育の実現に向けた示唆を得ることを目的とする。

「保育者の生成AI活用の実態の考察」

福祉社会学部 准教授 福島 豪

本研究は、保育者における生成AI活用の実態を対象に、その利用状況と教育・保育実践への影響を明らかにすることを目的とするものである。鹿児島県においては保育者の離職が課題となっており、業務負担の軽減や保育の質の維持が求められている。近年、保育者は製作物や保育内容の参考としてSNSを活用する傾向にあるが、ChatGPT等の生成AIの普及により、情報収集や発想支援の手段はさらに多様化している。一方で、「教育」「保育」という正解のない領域において、生成AIの活用がどのように位置づけられているのか、またその活用の在り方によっては、保育者や教師の専門的役割がAIに代替される可能性も指摘されており、その影響については十分に明らかになっていない。 本研究では、鹿児島県内の関係団体の協力のもと、アンケートおよびインタビュー調査を実施し、生成AIの利用頻度や利用目的、その具体的内容を把握する。これにより、保育現場におけるAI活用の実態を明らかにするとともに、保育・教育における専門性のあり方やAIとの適切な関係性について検討し、教育・保育とは何かという本質的な考察へとつなげていくことを目的とする。

「地域日本語支援におけるデジタル技術活用の実践的検討」

国際文化学部 教授 山川 仁子

本研究は、地域日本語支援におけるデジタル技術活用の実践的検討を対象に、外国人住民の生活と学びを支えるとともに、地域の実情に即した支援モデルの構築を目的とするものである。鹿児島県では外国人住民の増加に伴い、日本語支援の重要性が高まっているが、支援機会は地域差や時間的制約の影響を受けやすく、対面中心の支援のみでは継続的対応が難しい状況にある。一方で、翻訳アプリやオンライン教材、生成AI等のデジタル技術の普及により、多様な学習機会の提供や支援の柔軟化が可能となりつつある。こうした状況を踏まえ、デジタル技術を活用した日本語支援の実態と可能性を明らかにすることが求められている。 本研究では、鹿児島県在住の外国人住民および日本語支援関係者を対象に、質問紙調査およびインタビュー調査を実施し、支援ニーズやデジタル技術の利用実態を把握する。さらに、翻訳アプリや生成AI等を活用した日本語支援を試行し、その効果を検証する。これにより、地域に適した日本語支援のあり方を明らかにするとともに、外国人住民の生活支援、学習機会の充実、地域参加の促進に資する実践的示唆を得るとともに、地方私立大学がデジタル技術を媒介として果たしうる実践的役割を示し、他地域にも展開可能な基礎資料を提供することを目指す。

「離島における多元的健康関連データの統合的利活用による地域づくりの検討」

看護学部 准教授 稻留 直子

本研究は、地域の健康課題を可視化し、住民・専門職・行政が協働して持続可能な健康支援モデルを構築するための示唆を得ることを目的としている。 鹿児島県内離島の一自治体を対象に、健診・医療・介護・人口などの多様なデータを統合分析し、従来の市町村単位では見えづらい集落ごとの健康状態や課題の偏りを明らかにする。統計分析とGISによる可視化を行い、その結果をもとに住民ワークショップで健康課題への認識や行動を質的に把握する。これら量的・質的分析を統合して地域の健康課題構造を多面的に解釈し、可視化結果を起点に協働的で実践的な地域づくりへつなげることを目指す。