俳句は五・七・五の短いリズムで、その瞬間の景色や気持ちを切り取る日本独自の表現方法です。地域の自然や文化を直感的に伝えるのに適しており、土地の魅力を外国人に紹介する際にも効果的なツールとなります。国際性を取り入れた俳句は国や文化を越え、共有できる“国際言語”として広がりつつあり、鹿児島から新しい英語俳句事業を創出する可能性も十分に秘めています。
国際文化学科のマクマレイゼミ生23名は11月13日に、鴨池公民館にて開催された人権問題研修会にゲストスピーカーとして参加し、マクマレイ教授が「日本人と西洋人における写真俳句の捉え方の違い」をテーマに講演を行いました。ゼミ生は地域素材を用いた「俳句クイズ」を実施し、多くの地域住民の皆さまにご参加いただきました。クイズは大いに盛り上がり、俳句という文化資源が持つ国際性や、観光資源としての可能性を改めて実感する機会となりました。ここで実際に桜島を題材として詩と俳句は以下のものがあります。一見すると異なる題材を扱っていますが、どちらにも共通して鹿児島という土地の記憶 とも深く結びつけている点や、桜島は鹿児島にとって噴火・戦争・自然との共生といった歴史を背負い、厳しくも力強い土地の姿を表現するものとして位置づけられていることが理解できます。
黒い桜島折れた銃床海を走り 金子兜太(1919-2018)
black Sakurajima a broken rifle stock running across the sea.
花のいのちは短くて、苦しきことのみ多かりき
The life of a flower is short but its sufferings are many 林芙美子(1903-1951)
今回の企画は、体験的・野外学習の視点とも深く関わっています。地域に眠る俳句文学を教材として扱い、実際に訪れることで地域の風景・文化・歴史そのものを学びの場として再発見できる構造を意識して設計しつつ、ツーリズム事業化の可能性を考察する機会となりました。俳句人口は世界的にも多く、東京規模とも言われるほど広がりを見せており、こうした地域文化とツーリズム性をつなぐ実践式な企画はグローカル教育の好例とも言えます。午後は昼食後、フェリーで桜島へ移動し、桜島にはゆかりのある句碑が数多く存在するため、詩に描かれた風景を実際に探しながら「俳句ウォーク」を実施しました。院生の研究テーマでもある屋外教育の実践的応用であり、地域の自然環境そのものを教室として活用し、学習者が五感を通して地域を理解する取り組みとなりえるでしょう。桜島の風景を自らの足で歩き、句碑に刻まれている自然と現在の景観を重ね合わせる過程は、まさに体験的学習の核心となり、ツーリズム事業として形にできる要素でもあります。本研修会とフィールドワークは、地域文化の再発見・国際交流・実践的英語教育・野外学習という複数の要素が有機的に結びつけ、英語俳句を媒介にした国際理解教育の可能性を強く感じ意義深い活動となりました。
国際文化研究科 前期博士課程2年 原有輝
