IUK NEWS

2025.04.15

国際文化学部

天正八(1580)年銘のある最古級の石橋を確認 本学大学院生の日置市職員と国際文化学科中園研究室の研究

このほど鹿児島県日置市で、沖縄を除き国内最古級となる石橋が確認され、大きく報道されました。単純な桁橋(けたばし)とみられ、アーチ形に加工された橋の側面に「宗的寄進」「天正八(1580)年庚辰(かのえたつ)三月吉日」の刻銘がある重要資料です。

本学大学院博士後期課程で日置市教育委員会勤務の下小牧潤さんが、同市伊集院中学校の学校碑の一部になっていた石材に注目し、中学生とともに発掘して銘文を確認。国際文化学科の中園教授をはじめ研究室スタッフが3D解析など研究に協力し、銘文、加工痕、摩滅痕などを可視化して橋であることを確定しました。

昭和4(1929)年の県の報告書に、島津氏ゆかりの寺、雪窓院の門前の溝川に架けられていたと伝わる石橋に同様の刻銘があるとの記録があり、江戸後期にまとめられた『三国名勝図会』の雪窓院の図にも山門前に石橋が見えます。雪窓院は戦国大名・島津義久らが母のために建立したもので、明治初年の廃仏毀釈で破却され現存しません。

下小牧さんは「年代の明らかな石橋は江戸時代以降のものがほとんど。安土桃山時代にさかのぼる非常に古い資料で驚いている。多くの人に知っていただき感動を共有したい」と興奮気味に話します。中園教授は、「文化財の中で石橋は、実態の把握を含め研究の余地が大きいのが現状。今回、古い資料を精密に記録でき、研究上の確実な定点として使用できる」と意義を強調し、「化学成分を調べ石材の産地を特定するなど、さらなる解明に努めたい。この例が、身近にあっても気づかない埋もれた文化財に多くの人が目を向ける刺激になれば」と、研究の推進と展開に意欲を見せています。

4月12日には現地見学会が行われ、100名を超える市民が下小牧さんの解説に聞き入りました。

調査された石橋(日置市教育委員会提供)
3Dモデルを解析し文字や痕跡を可視化(中園研究室提供)