第8回三大学院共同シンポジウム開催

「経済不況と地域再生を目指して」テーマに

鹿児島国際大学大学院経済学研究科と札幌大学大学院経済学研究科、沖縄国際大学大学院地域産業研究科で組織する「三大学院共同シンポジウム」が12月5日、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学で開かれた。8回目となる今回の共通テーマは「地域づくりパート3―経済不況と地域再生を目指して」。各大学院の研究者ら4人が地域における実態を踏まえて問題提起や展望について報告し、その後のパネルディスカッションで議論を深めた。

本学からは富澤拓志准教授が、「地方分工場の未来と産業振興」をテーマに報告。このほか、沖縄国際大学大学院の宮森正樹教授が「沖縄における長期滞在型観光の可能性」、札幌大学大学院の松本源太郎教授が「ネットワーク・観光と地域づくり」、那覇市NPO活動支援センター地域教育コーディネーターの東濱克紀氏が「地域づくりにおける大学・企業・NPO協働の人づくり」についてそれぞれ報告した。次回は鹿児島国際大学で開催予定。

沖国大・宮森正樹教授 「沖縄における長期滞在型観光の可能性」

複合的な魅力の開発を

沖縄国際大学の宮森教授沖縄観光の人気は根強いが、景気低迷の影響などで一人当たり観光客の県内消費額は減少傾向にある。この状況を乗り切るために模索するべきが「長期滞在型観光」で、沖縄県の施策や観光・リゾート資源に加えて、社会的潮流の中で沖縄の魅力を高める戦略である。

ハワイ州を訪れる観光客の平均滞在日数は9.1日。沖縄を訪れる観光客の平均は3.8日である。近年、短期周遊型旅行よりも現地の生活を通して異文化に触れたり、人々との交流や現地社会への貢献をしたりするような滞在型旅行に興味を示す人が増えている。

沖縄が観光で発展するためには、観光客数と観光収入のバランスが欠かせない。そのためには、(1)潜在顧客のニーズの把握(2)市場細分化(3)観光商品のコンセプト構築(4)顧客ターゲットのコミュニケーション戦略の構築(5)地元とともに作り上げる共存の仕組みの構築をするなど、滞在日数を増やす複合的な取り組みが必要である。

鹿国大・富澤拓志准教授 「地方分工場の未来と産業振興」

撤退リスクへの備えを

鹿児島国際大学の富澤拓志准教授昨今の世界的不況の影響もあり、国内各地で工場撤退が相次いでいる。鹿児島県では出水市にあるパイオニアやNEC液晶テクノロジーの工場が閉鎖され、深刻な雇用危機が生じている。

誘致工場の多くは地域の移出産業として重要な役割を持っていたが、近年はグローバルな競争環境の変化に応じて企業が立地を弾力的に変更するようになっており、企業誘致による産業振興では、撤退や縮小といったリスクへの対処も同時に考えておく必要がある。

そのためには、既存工場の実情をできるだけ詳しく把握し、必要に応じて工場の操業環境整備に対する支援を強化し、関連する技術や経営的な知識、人材について地域全体での厚みを高めることが重要である。

同時に、撤退されたときの対処として、解雇された人への緊急支援体制を普段から準備するとともに、受け皿となる誘致企業以外の産業を長期的視点で育成することが最も本質的な方策である。

札幌大・松本源太郎教授  「ネットワーク・観光と地域づくり」

交流人口増の視点重要

札幌大学・松本源太郎教授観光産業の振興を核とした地域づくりへの関心と期待が高まっている。観光は総合的産業で多様な業種を含む。産業関連分析から観光の経済波及をみることが重要で、北海道と沖縄県は観光客の純入り込みが大幅な「入超」であり、観光による地域経済効果を正しく認識し、活性化に向けた戦略を用意する必要がある。

余暇や旅行に関する国民のニーズも多様化している。自分の関心のあるテーマにこだわったり、訪れた地域での人々との交流や体験を重視したりする「ニューツーリズム」が新しい潮流となっている。

一方で、創作活動を続けながらペンションを経営するとか、個性的な生活をする手段として農家民宿を営むなど、目的意識をもった担い手も活躍している。これらがネットワークを外部に広げ、交流人口を増やせば地域活性化にもつながる。観光を通じたネットワークは社会関係資本の観点からも住みよい地域社会をつくるのではないだろうか。

那覇市NPO活動支援センター地域教育コーディネーター・東濱克紀氏
「地域づくりにおける大学・企業・NPOの協働の人づくり」

成熟社会担う人材必要

東濱克紀氏人材育成において、大学が力を入れている点と産業界が大学に期待している点が必ずしも一致しているとは言えない。地域を担う人材育成という視点から、社会全体で学生を育てていくことが求められている。

少子高齢化の進展やグローバル競争の激化で、既存の制度や仕組みで解決できない社会的な課題が山積している。行政機関や企業とNPO(民間非営利組織)が協働することによって、時代の変換期に活躍できる人材を育成できるのではないだろうか。

沖縄県内ではNPO法人が、観光産業や金融・IT業界に焦点を当てた人材育成プログラムを行っている。企業、NPOの協働に大学が今後どのようにかかわっていくかが課題である。

そこで、NPOがコーディネーターの役割を果たすことで、大学と企業をつなげていきたい。自立と貢献を理解し、成熟社会を担う市民として活躍できる人材育成のために、ぜひ三者が協働していこう。

 

 

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