「グローバル時代の地域経済」テーマに三大学院シンポジウム開催
鹿児島国際大学 / 沖縄国際大学 / 札幌大学
地域経済政策を専門にする3つの大学院が県境を越えて問題点や展望を考える「第6回三大学院共同シンポジウム」が12月8日、鹿児島国際大学であった。鹿児島国際大学大学院経済学研究科、札幌大学大学院経済学研究科、沖縄国際大学大学院地域産業研究科が02年から開催。今回は「グローバル時代の地域経済」をテーマに、4研究者の報告とパネルディスカッションで議論を深めた。
鹿国大の小林隆一教授が「鹿児島県の持続的発展に向けて」、札幌大の岩崎徹教授が「グローバリズム時代の北海道地域経済」、沖国大の富川盛武教授が「沖縄観光における海外観光客誘致について」、鹿国大の竹内規浩教授が「経済のグローバル化と地域企業の国際化」と題してそれぞれ報告。
鹿国大の衣川恵研究科長が司会を務めたパネルディスカッションでは、地域活性化にとって広域化をどう捉えるか議論。「地域風土は違うが『九州は一つ』の考えを持つべき」(小林教授)、「自由化・国際化は必要だが、環境や生活面で制御するローカルルールが必要」(富川教授)、「産業集積が進めば、鹿児島も広域連携が深められるのではないか」(竹内教授)などの意見が出され、「地域経済が元気でないと、国も元気にならない」との認識で一致した。
第7回は札幌大学で開催する予定。
「鹿児島県の持続的発展に向けて」 / 鹿国大・小林隆一教授
「脱観光」へ発想転換を
人口が減少し、IT革新とグローバル化が進展するいま、鹿児島のドメインは①日本・世界の食料基地②港を生かした国際物流拠点③脱観光(住みやすい県づくり)の3点。具体的には、鹿児島にはうなぎや茶など競争力を持つ農水産品があるがマーケティングに欠ける。安心・安全といった魅力・優れた点を前面に出し、もっと訴求していくべきだ。
また、日本の輸出入貨物量の99%以上が海上輸送であることを見落としてはいけない。鹿児島は北九州自動車工業圏とリンクして、物流の拠点となり得る。
さらに鹿児島の風土であるよい空気・よい空、よい水、ストレスの少ない街並みは時代が求める魅力でもある。交通体系を再構築して県域全体の住みやすさ暮らしやすさの追求も大切だ。
グローバル時代を迎えたいま、「世界を相手にする」という気概を持ち、港・空港・鉄道・高速道路を有する本県の特性を生かし、持続的発展を目指した政策形成が求められるのである。
「グローバリズム時代の北海道地域経済」 / 札幌大・岩崎徹教授
地域疲弊し格差恒常化
北海道の産業構造は都府県に比べて第一次・三次産業の比率が高い一方、第二次産業の比率が極端に低い。「内国植民地」といえる状況に、1980年代以降のグローバルの新展開と小泉構造改革の波が押し寄せ、北海道の地域経済は大きな打撃を受け、全国との格差を広げ恒常化している。
岩見沢市はその典型例。グローバル化が炭鉱、鉄道といった重要産業をスクラップさせた。さらに公共事業の縮小が建設業の受注減・倒産を招き、規制緩和策が商店街をシャッター街化。行政がてこ入れを図ろうにも、財政難が壁になり、地域全体の縮小均衡を招いているといえる。
北海道における産業構造の歪みを正すことを長期展望として位置づけ、一次産業に付加価値をつけて三次産業と有機的結合を図ることが求められる。その際に大切なことは、「外部資本導入」「上からの指導」「イベント主義」を極力排除し、「内発的発展の道」を探ることである。
「沖縄観光における海外観光客誘致について」 / 沖国大・富川盛武教授
狙うはアジアの富裕層
島嶼社会の沖縄において、空港や港湾の持つ役割は、地域社会や経済の発展を規定する大きな要因である。
アジアにおける航空市場の自由化が進む中、とりわけ空港は重要だ。空港を土台にして沖縄が「太平洋・平和の交流拠点(パシフィック・クロスロード)」として発展できる要素が存在するからだ。
現在の沖縄観光は薄利多売方式であり、これからは量から質に転換して、付加価値を高める必要がある。沖縄観光のもう一つの特徴は、海外観光客が極端に少ないことである。中国、台湾、韓国、シンガポールなどには「スーパーリッチ」と呼ばれる富裕層が存在しており、その市場の開拓は不可欠である。
現在の那覇空港は滑走路が一本しかなく、観光シーズンに予約が取りにくいなどの制約が多い。同空港の整備拡大によって、アジアのダイナミズムにビルトインし、外国観光客の増大による沖縄の自立経済につなげるべきである。
「経済のグローバル化と地域企業の国際化」 / 鹿国大・竹内規浩教授
鹿県企業の国際化低調
鹿児島県の輸出入は石油の輸入を除いて、大半が県外の港・空港を経由して行われており、人口比でみた輸出入規模は全国レベルの半分程度である。
県内企業による輸出拡大への取り組みも行われているが、主力は食料品であり、国際直接投資への結びつきは困難だろう。
こういった状況では海外への直接投資誘因(物流コストの引き下げ、輸入国での保護主義への対応など)は発生しにくい。輸入品との価格競争に対処するための低賃金国での生産も、経営の選択肢として表面化するには至っていないようだ。
海外投資にはそれに耐えうる企業体力も必要だが、県内企業の大半は脆弱。よって鹿児島県企業のグローバル化は極めて低調だ。
鹿児島は東南アジアに隣接しており、物流拠点などとしての利点は持つ。企業競争力を高めるには、優秀な人材確保と技術力の高度化は避けて通れない。県内にもそのような事例が見られるようになってきた。
