内発的に教授能力磨く
パイロット授業
22名の先生によるボランティアで、「パイロット授業」がこの4月から始まりました。授業のための「FDパイロット授業計画表」、「FDパイロット授業の進め方について」が、みなさんの手元に届いているはずです。こうして本学もようやく「教授能力の開発」に着手することになります。この授業の実験的な意味について考えてみます。
2月6日の読売新聞に山形大学小田隆治先生(山形大教育方法等改善委員)がこう書いています。「・・・学生の声を教育改善に反映するために、学生による授業評価を導入する大学が増えている。山形大学でも、授業が評価され、結果が公表されている。教員は結果を見て、自分の長所と欠点を自覚し、授業改善を進めている。だが自助努力にも限界がある。その点、教員が相互に授業を公開し、互いに批評しあうのは、有益な改善方法である。だが見ず知らずの教員の授業を参観するには遠慮があるし、ましてや他人の授業を批評することは難しい。そこで山形大学では、数人の教員で行うミニ公開授業の普及と発展に努めている」。これにつづいて生物学専攻の小田先生と哲学専攻のH先生の間で行われたミニ公開授業「なぜ人を殺してはいけないのか(哲学)」が紹介されています。
ほとんどどの先生も教育の改善に関心を持っています。その関心を広め・深めるために学生の授業評価が一定の効果を持っていることは明らかですが、それが形式化されているというのも、多くの大学で見られる実情です。
「教授能力の開発」が内発的に、また持続的に行われるにはどうすればよいか。山形大学の「ミニ公開授業」はそのための、地味ですが、着実な試みだと思います。
わたくしたちのパイロット授業も、この課題に対する解を模索する実験です。授業の特徴は第一に、学生の評価だけではなく、内外の研究者の評価をえるように公開されていることです。わたくしたちの「研究」における内発性と持続性が、学会発表や論文の公表という形で可能になる、「同僚による評価」を抜きにしては語れないように、教授能力の開発にもこの公開性と討論は不可欠です。その授業を参観した同僚たちが参加して開かれる「意見交換会」(研究会)など、教授能力の開発が内発的・持続的になるよういくつかの工夫がおこなわれています。
第二の特徴は学生の授業評価の様式に関する模索です。先生が事前に作成・公表する「授業目標」、それに密接に対応する学生の「評価項目」を工夫することで、形式的ではない、自分の授業改善にいちばん役に立つ評価の形を実験することができます。たとえば音楽科のレッスンを担当する先生はどういう学生評価のかたちを模索されるのでしょうか―興味深い問題です。評価形式の工夫により、講義を改善する内発性と持続性がいっそう強化されると考えます。
最後の特徴として「実験」データの作成をあげることができます。一年間の試行を一過性の出来事にしないために、「学生による授業評価」、授業参観者による「参観記録」、意見交換会を終わったあとの授業者の「自己評価記録」など、パイロット授業をめぐる活動を記録化して、「実験」の精度を高める工夫をしています。
22名の参加を得て、しかもこのように高度にシステム化されたかたちで「実験」に乗り出すことが可能になったのには、大きな背景がありました。
それは「大学教授法研究会」です。この研究会は平成12年4月に蓑毛良助先生(当時教務部長)の呼びかけで始まり、現在に至るまで20数回の研究会が開かれています。授業公開にもとづいた「教授能力の開発」ではありませんでしたが、この研究会の活動があったがために、わたくしたちは、一気に「パイロット授業」に踏み出せたのだと実感しています。
