地域活性策の一つの選択
合併しなかった離島
先月このコラムで、菱刈町に進出を予定している日本精機のことをとりあげました。このニュースに注目したのは、20人弱規模の小ささとはいえ、(1)単純な加工・組み立てを行う工場やショッピング・センターなどの進出と異なり、そこを拠点とする取引あるいは技術知識の地道な展開が可能になる(2)さらに、現代工業を支える高度な技術の工場が「県都」ではなく県境に生まれる、という点からです。
わたくしたちはともすれば中央と地域(地方)という文脈、つまり中央依存の地域の発展を考えますが、そうではない地域のあり方を考えるときの大きなヒントになるかもしれない。そう思いました。
原稿を出してまもなく、「合併しない自治体の知恵・独自施策生かし活性化」(7月20日朝日新聞・野崎健太記者)という記事に出合いました。町村合併をしなかったのは、伊予灘に浮かぶ離島・大分県姫島村。
人口約2400人、診療所の医師、フェリーを運航する現業の船舶課を含む村職員176人(職員一人あたり人口14人。大分県内市町村は平均88人)。一見して人口の割に職員が多い非効率的な島にみえますが、読んでいくとわたくしたちの効率の基準、「活性化」というイメージが薄っぺらで貧弱だと気づかされます。
見出しにある島の「知恵・独自施策」を列挙しましょう。 (1)職員の給与を抑え(ちなみに北海道夕張市についで2番目に低い)、多くの島民を採用する(ワークシェアリング) (2)診療所1カ所(職員は医師3人を含めて25人)。診療所の隣に自立支援のための入居施設・高齢者生活福祉センター(病気になれば隣の診療所から医師を派遣) (3)村の健診受診率72%(県平均を10ポイント上回る)、健康寿命は女性県平均並み、男性は県下2位 (4)一人あたりの老人医療費年間70・3万円(県平均88・8万円) (5)普段はデスクワークの総務課職員は週3日、数人ずつの交代で道路管理、海岸清掃。
ワークシェアリングは個人の利益が優先すると、絶対運用できないシステムです。それが40年ぐらい前から自然発生的に行われていたそうですから、たいへん驚きました。
島民の言葉です。総務課課長補佐「島の暮らしは生活費が安い、地元で働けて幸せ」。村長「島に若者を残すには、役場が雇うしかない。官にできることは官でやる。それが姫島流だ」。
海岸清掃まで職員がしているのも、島の体験観光を盛んにしたいからでしょうか。地域の深い思考力をこの島に窺うことができます。活性化にただ一つの方法しかないのではありません。地域の知はこのように多様でありうると教えられました。
