学力ではないその人と成り

6000ccに点火:No.49(2008/5)

キャリアの意味

人とその仕事ぶりを表現するときに、「実力がある(ない)」「キャリアがある(ない)」とよくいいます。一応の意味は伝わりそうですが、「実力」とはなにか、「キャリア」とは何か、改めて自問してみると、あいまいな理解をしていることに気付くのではないでしょうか。わたくしも次の本に接するまで、そうでした。

小池和男教授編/監修「国際化と人材開発」を読む機会がありました。この本はキャリア研究選書シリーズ日本の人材形成第5巻にあたり、法政大学大学院の研究者・大学院生によって書かれたものです。

日本の企業(本社)の多くは海外に直接投資を行い、海外子会社を経営しています。海外子会社の従業員数が本社を含む国内会社の従業員数を上回り、日本の雇用を支えているだけではありません。その売り上げ利益も、輸出の低迷にかかわらず、確実に伸びています。

海外子会社社長の成功要因、海外派遣者の人材開発とキャリア、海外開発プロジェクトのマネジャー、タイ人生産労働者の働く意欲、アメリカの労働組合など、わたくしたちの通念をゆさぶる知見がいたるところにあります。これは各章を書いた人たちの多くが、国際化と海外子会社を自分の仕事歴の中で、実際に体験してきたからです。そのため斬新な資料と聞き取り調査が可能になりました。

人のキャリアとは何か、実力とは何か。人は組織の中でいろいろな階層の職務(課題)につきます。誠実に職務を果たすことは基本ですが、それ以上にその仕事ぶりが組織の発展に寄与・貢献すると周りから評価され、次の高次の職務(課題)を期待される。そういう人をわたくしたちは「実力がある」「キャリアがある」と評価しているのだと思います。

海外子会社を持つ国内企業(本社)の社長に、海外子会社の社長など要職を経験した人が多いといわれています。単なる経験者ではありません。そこである水準の大きな仕事を実らせた人たちです。言い換えれば学力ではない、ましてや語学力では決してない、将来を見通す企画力と企画を実行に移す組織の結集を組み立てる力。職務をわたりながらこの力を身につける人たちを、真実のキャリアと考えるべきでしょう。

4月からキャリアデザイン室が活動を始めました。活動の目的は、就職に向けた学生たちの心構えを育てることです。従来行われてきたキャリアデザイン講義や宇宿商店街での経営実験をふくむインターンシップも、同じ目的です。

会社の規模、組織の大小に関係なく、キャリアはその人の「人と成り」といってもよいでしょう。人は生涯仕事に向かうのですから。

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