アナログなのに「多機能」

6000ccに点火:No.40(2007/8)

ペンと紙

わたくしの筆記用具は万年筆とエンピツです。ペン先は太くて、筆の線の鋭さ・ふくらみが筆圧で自由に筆刻できるものを愛用しています。「シャーペン」は使いません。エンピツと同じ傾きと筆圧がくせになっているので、「シャーペン」はよく折れます。折れないために注意を払わねばならない筆記用具は、「用具」としては不適当です。親しい友人・先輩へのいわゆる親書は、筆にしています。もっとも最近は、親書でもはがきはペンになりました。

7月11日付日本経済新聞のコラム「新風シリコンバレー」に、この1月に起業したライブスクライブ社のジム・マーグラフ氏(最高経営責任者)の話が載っていました。網掛けのタイトルが「手書き文字をデジタル化」、見出しが「『ペンと紙』手軽に多機能」です。ペンを握っているかれの写真もあります。

太目の万年筆のようなペンは、カメラ、マイク、スピーカーを内臓。紙は微小な点が印刷された「ドットペーパー」。ペンから記入される文字や図形はパソコンにつなげば、音声付の電子ノートになり、送信、キーワード検索、計算や翻訳の機能までできる「スマートペン」。しかも紙の触感まで楽しめる。

講演・講義あるいは会議の記録にも、わたくしは白紙のノートに万年筆または鉛筆を使います。これは紙面を縦、横、ななめ、しかも両方向に自在に書けるし、図も空いているところに自由に描けるからです。

10年ほど前、学生たちが上の行から順番に筆記するのを見て、これでは話し手の速さについていけないだけではなく、内容を正確に記録できない、と考えました。年に30回の講義は学生もダレルときがあります。そういうころを見計らって、「ノートは絵である」「反復の意味」とかタイトルをつけて、たとえば自分のノートを学生に見せながら、「講義」をしたものです。内容はいずれも学生のときに、身につけておいたほうがよい基本的スキル(技能・熟練)を選びました。

マーグラフ氏によれば、パソコンをノート代わりに使う米国の学生はわずか8%。まず大学生の市場を狙って、この秋売り出すそうです。数式や図形までが、わたくしが白紙に書くように、走り書きできる。なんと素晴らしい! 興奮のあまり、機内で前席に座っておられた南新先生に、その記事を渡しながら、「わたしが死ぬまでには日本で使えますよね」といいました。通読されての返事は「そうですね、完成するまではいろいろありますから」。それでも喜びは尽きません。

LIVESCRIBEという社名もよい。まさしく自由自在に描けるのだ。その後もこの話題を振りまいているところです。

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