芸術の秋、心にうるおい
「文田画伯の贈り物」
10月はじめ本学は日本高等教育評価機構による「実地調査」を受けます。大学における教育・研究が、じゅうぶんな内容と水準を達成しているか、またその充実に向けた努力が継続的に行われているか? いままでその点検は「自己評価」という形式で行われていましたが、今度はそれに加えて第三者による点検を受けることになります。
学長に就任してまもなく3年になりますが、「実地調査」はわたくしの仕事ぶりに対する評価にもなるわけですから、少なからず緊張しているところです。
緊張の中で楽しみにしていることがあります。文田哲雄さん(二科会理事・鹿児島市立美術館長)の絵がもうすぐ大学に届くのです。
文田さんとは高校2年、3年と同じクラス(担任の先生も持ち上がり)で過ごしました。といっても(旧制中学校で病気休学のため)わたくしより2歳年長で、その年ごろで2つ年上といえば、おとなと少年の違いを感じるものです。
その上、すでにそのころから画家として嘱望されていた人なので、おだやかな風貌に接していても、普通の高校生に過ぎないわたくしは内心いつも気圧されていたようです。志を立てた青春が発散するオーラのせいだったと思います。
すでに退職されている担任の先生ご夫妻を招いて、球磨川の宿で遊びました。4年前の6月です。文田さんを含め親しかった級友たちに声をかけ、鮎と球磨焼酎と湯を楽しみました。
その夜、酒を酌みながら「文田さん、絵を描いてください」と頼みます。翌朝わたくしたちは三々五々東西に散っていくのですが、「絵を描いてほしいといっていたが、本当ですか」。「本当ですよ」という会話をして文田さんと別れました。
縁あって鹿児島で暮らすようになり、去年の秋、文田さんのアトリエを妻と一緒に訪ねました。こちらに来ましたという(遅すぎる)あいさつをかねて、頼んだ絵をみてみたいという気持ちでした。
アトリエに置いてある数枚の百号の作品をみているうちに、大学の会議室に飾りたいと思い、お借りできないか率直にお願いしました。春が来て「いいよ」という電話があり、本学総合企画室の小林和代さんに同道してもらい、百号2点、十号1点を選びました。
「寄贈するよ」という電話があったのはそれから1週間ぐらい後です。耳を疑いました。画装を整えてその絵がもうすぐ届くのです。学長室に飾るのではありません。会議室などに飾り、教職員が喜んでくれることを楽しみにしています。
ところで球磨川でお願いした絵もまたアトリエの画架におかれ、「実りの秋」を待っています。
