「声色」がバレない落し穴

6000ccに点火:No.27(2006/7)

「IT時代の代返」

 講義に出ている学生は、自分の学生証を、スキャナーに読み取らせて、出席を登録する。本学は4月から、このような「出欠記録システム」を全授業で行っています。

 新入生ゼミ、学部の演習、講義で指導に当たる教員が出欠記録をみて、欠席の多い学生から事情を聞き、立ち入った相談や助言ができるようにする。これが出欠記録システムの目的です。

 最近になって「代返」をする、つまり出席していない学生の学生証を読み取らせる。また自分の学生証を読み取らせたら退席する。そういう学生たちがいると聞きました。

 IT時代の「代返」―かくやありなむといっとき感心しながら、わたくしの学生時代を思い返していました。そのころ入学して2年間、語学と体育の授業は40人ぐらいのクラス編成で行われていました。いずれも教員は出席をとっていました。きょうのドイツ語では自分に「翻訳」はあたらない、と確信できるとき、友人に代返を頼む。頼まれた友人が声色を変えて返事をする。教員に聞こえないクスクス笑いが教室の一角に起こる。

 もちろん出席が多いから試験の点数が高いということにはなりません。欠席した学生は後で取り戻す勉強をしなければなりません。教員が研究している作品がテキストに選ばれるので、欠席した日の授業部分が出題されると、予想以上に低い点数でした。

 出欠を取り終わってから退席する。これはありませんでした。礼儀もさることながら、退席するために大学にわざわざ出てくるというのは、どういう理由であれ、念のいった時間の無駄使いだからでしょう。

 閑話休題。授業に出ていなくても勉強している。こういうタイプの学生たちがいました。しかも優秀な学生である場合が多い。現在はそうではないようです。わたくしの見聞では、大学に来ないことは勉強を放棄しているにほぼ等しいと考えていいようです。

 入学した1年は授業に来る、2年で授業にあまり来なくなる、3年で授業に出ると理解できず休みがちになる。就職の準備でまず必要なのが、企業の一次試験に合格する基本学力ですが、それを準備できないで焦る。学生部・進路支援センターの文書によれば、こういうパターンをとる学生たちがいます。

 なによりもこの学生たちの将来にとって、ゆゆしい傾向です。したがって教育を施す大学にとって、見過ごしてはならない現象ではないでしょうか。

 むかし「代返」をたのしみ、「代返」が許容された状況とは違う時代に、青春も大学もおかれています。

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