過去のプロジェクト
1968年から1986年までの研究成果は、研究所発行の『地域研究』(第1巻1号~第14巻1号)に発表されています。1986年の研究所の改組を契機に、『地域総合研究』(第15巻1号~)に改称し、現在第31巻第1号まで発行しています。
また、機関研究プロジェクトは1991(平成3)年の出版に始まる研究叢書として、単行本の形で公表しています。 【研究叢書紹介】
東アジア資本主義形成史
地域総合研究所の新しい共同研究の最初のプロジェクトとして、平成15年4月から4年間の予定で「東アジア資本主義形成史」を立ち上げた。その概要を紹介する。
研究の意図・目的
現在は、世界史的にみると20世紀資本主義から21世紀資本主義への過渡期にある。その移行を規定する重要な条件として、東アジア(東北アジアと東南アジア)経済の急速な発展と広域経済圏の形成がある。
近代社会科学は西ヨーロッパで成立し、欧米を中心に発達してきた。そのために欧米中心主義的な偏りがある。欧米を基準にして非欧米(アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)をみる、欧米を主体とし非欧米を客体として捉える、欧米を典型とし非欧米を非典型・ゆがんだ・遅れた存在とする、といった傾向である。この近代社会科学の偏り・ゆがみは是正されなければならない。
アジア経済の発展が注目されるのは最近の事であり、変化が激しい事もあって現状の後追い的研究が多く、現状に振り回されて研究の揺れが大きい。その原因としては、東アジア経済研究が未だ欧米中心的な偏りを持つ表面的なものにとどまっている事と現状分析に偏り、歴史分析が遅れていることがある。
東アジア経済の歴史的研究は、従来一国単位で行われ、二国以上にまたがる研究は関係史、交渉史であった。しかし、最近東アジア全体を視野に収める研究が急速に進み始めた。
本共同研究は、そのような新しい東アジア経済史の成果を基礎にし、近代東アジア経済の歴史を全体的・総体的に捉える事を目的とする。
研究の内容
地域として、東アジアは東南アジアを含むが、本共同研究ではそのうちの東北アジア(日本、中国、韓国、北朝鮮、台湾)に絞る。東南アジアまで広げるのは、研究能力・研究期間・研究費等の点で難しく、歴史的にさかのぼると東アジアの範囲を東北アジアとする妥当性が大きくなるためである。19世紀までは東南アジアは東北アジアと南アジア(インド中心)の中間地帯の性格が強い。
取り上げる時期は、15世紀から20世紀であるが、中心は19、20世紀。15世紀は資本主義形成の基盤となる小農社会が東北アジアにおいて形成され始め、現在につながる東アジア広域経済圏の形成は19世紀からだからである。
非常に困難な目標だが、一国単位でなく、国際関係でなく、東北アジアを構成する諸国・諸地域の内部構造を含みながら東北アジア近代経済史の全体像を構成するよう努力する。
東北アジア以外の世界の地域(他のアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、北アメリカ等)との比較にも注意を払う。東北アジアの独自性を捉えるよう努力するとともに、世界史的普遍性を見直し、欧米中心で無い世界史の構成にも貢献する事を目指す。
共同研究のやり方
メンバーに学外者、特に外国の研究者が多いので合宿研究会(年2回を予定)を中心に共同研究を進める。全員が報告し討論する。
研究所に事務局を置き、専任所員及び職員が担当する。
研究の分担は、メンバー各自の専門・関心を尊重するとともに、共同研究の目的・意図との関連で専門・関心を広げてもらう。
合宿研究会、調査、報告・論文作成、成果の刊行に重点を置き、資料・文献の収集には重点を置かない。
研究期間は3年間、その後1年間を成果の取りまとめ、公表にあてる。
共同研究のメンバー
共同研究を成功させるために最も重要なのは、優れたメンバーとその協力体制である。そのため時間をかけて慎重に人選を行った。これはという人で参加を断られた場合ももちろんある。
メンバーを選ぶ基準として、比較史に関心を持ち、意識的にその方法を使うこと。一国ではなく東北アジア全体に関心を持ち、共同研究において少なくとも二国・地域を扱える。自分の専門分野だけでなく、他の共同研究者の研究にも積極的にコミットする。自分の考えを全体の中で修正してゆく柔軟性をもつ。なるべく若い研究者がよいが、すでに優れた研究成果を発表している人。
メンバーは次のとおりである。
| 中村哲 | 地域総合研究所長、経済学研究科教授、専門分野・研究分担 東アジア比較経済史・総括 |
|---|---|
| 呼子徹 | 地域総合研究所専任研究員、経済学部助教授、鹿児島経済・東アジア経済統計 |
| 井上和枝 | 地域総合研究所専任研究員、国際関係学部助教授、朝鮮=前近代社会史、東北アジア家族史 |
| 康上賢淑 | 地域総合研究所専任所員、東アジア経済論、アパレル産業・ファッション産業論 |
| 堀和生 | 京都大学経済学研究科教授、朝鮮近代経済史、台湾近代経済史 |
| 沢井実 | 大阪大学経済学研究科教授、日本近現代経済史 |
| 谷本雅之 | 東京大学経済学研究科教授、日本近代経済史、比較経済史 |
| 李榮薫 | 韓国・ソウル大学校経済学部教授、韓国経済史、比較農村史 |
| 朴ソプ | 韓国・仁済大学校経商学科副教授、韓国近現代経済史、比較経済史 |
| 王玉茹 | 中国・上海財経大学経済研究所教授、中国近代経済史、経営史 |
| 林満紅 | 台湾・中央研究院近代史研究所研究員、台湾経済史、中国経済史 |
| 李宇平 | 台湾・中央研究院近代史研究所副研究員、中国近代経済史、経済思想史 |
東アジア近代経済史に関する世界最高のメンバーであるといえる。今後はメンバー間の連絡を密にし、よい協力関係を作ってゆきたい。
成果の公表
1年に2回の合宿研究会を行い、その成果を次の年度に取りまとめ、単行本の形で公表するよう努力する(3冊刊行)。それが不可能な場合も、共同研究の成果を2冊の単行本として刊行する。また『地域総合研究』に随時、成果を発表する。
成果の刊行は日本だけでなく、中国、韓国、台湾でもそれぞれの言語で行う。また、共同研究の最後の取りまとめは、世界的に権威があり、販売力のある出版社(Oxford UP、Canbridge UP、Stanford UPなど)から英語版を出すことを目指す。できれば英語版を増やしたい。共同研究の成果が、日本だけでなく、東アジア、世界の東アジア経済史研究にインパクトを与えることを目指したい。
研究の成果(2003年~2006年)
- ・『東アジア近代経済の形成と発展-東アジア資本主義形成史Ⅰ-』
(2004年度に、日本・中国・韓国・台湾の4言語で同時出版) - ・『1930年代の東アジア経済-東アジア資本主義形成史Ⅱ-』
(2005年度に、日本語版のみを出版) - ・『近代東アジア経済の史的構造-東アジア資本主義形成史Ⅲ-』
(2006年度に、3年間の研究成果の集大成として
日本・中国・韓国・台湾の4言語で同時出版)
「南九州・沖縄の経済・社会・文化」のプロジェクトについて
| サブテーマ | 研究期間 | 研究者数 |
|---|---|---|
| 沖縄をめぐる対外交渉史の研究 | 2001 ~2002 | 5 |
| 徳之島の文化・社会・自然の総合的研究 | 2001 | 11 |
| 時代転換の諸断層南九州・鹿児島地域における変化の同時性と差異 | 2000 ~2001 | 6 |
| 日本(重点は九州・沖縄)と中国の経済・社会・文化に関する総合的研究 | 1999 ~2000 | 6 |
総合テーマ
| サ ブ テ ー マ | 研究期間 |
|---|---|
| 南九州・沖縄の経済・社会・文化 | 1994 ~2002 |
研究叢書
機関研究のサブテーマを2年間で研究・調査し、それぞれの研究メンバーが論文や調査・研究ノートを執筆して一冊の単行本を刊行しています。これまでに発行された本を紹介します。
| タイトル | 出版社 | 版・ページ数 |
|---|---|---|
| 『沖縄対外文化交流史』 2004年3月 | 日本経済評論社 | A5 版327ページ |
| 『時代転換の諸断層』 2003年3月 | 日本経済評論社 | A5 版225 ページ |
| 『日中の経済・社会・文化』 2001年12月 | 日本経済評論社 | A5 版331 ページ |
| 『地域文化と福祉サービス』 2001年3月 | 日本経済評論社 | A5 版247 ページ |
| 『市場化時代の地域経済』 2000年3月 | 日本経済評論社 | A5 版287 ページ |
| 『近代秩序への接近』 1999年3月 | 日本経済評論社 | A5 版285 ページ |
| 『ボランタリー・エコノミーと地域形成』 1998年4月 | 日本経済評論社 | A5 版327 ページ |
| 『地域のくらしと高齢化社会』 1997年4月 | 日本経済評論社 | A5 版323 ページ |
| 『分権時代の経済と福祉』 1996年4月 | 日本経済評論社 | A5 版280 ページ |
| 『近代東アジアの諸相』 1995年4月 | 勁草書房 | A5 版234 ページ |
| 『住みごこちの社会学』 1994年9月 | 法律文化社 | A5 版161 ページ |
| 『変わりゆく地域と産業』 1993年9月 | 文眞堂 | A5 版248 ページ |
| 『南のくにのまちづくり』 1991年5月 | 高城書房 | B6 版239 ページ |
