新 地総研プロジェクト
地域における知のネットワーク形成
新プロジェクト「地域における知のネットワーク」
所長 瀬地山 敏
地域総合研究所は平成15年,大学付置研究所に編成替えし,プロジェクト方式で研究を進めることになりました。前・中村哲所長はこの新しい方式で,研究を組織した最初の所長です。研究チームは平成15年度から平成18年度にわたる成果を,『東アジア近代経済の形成と発展―東アジア資本主義形成史Ⅰ―』,『1930年代の東アジア経済―東アジア資本主義形成史Ⅱ―』,『近代東アジア経済の史的構造―東アジア資本主義形成史Ⅲ―』としてまとめ,日本・中国・韓国・台湾の4言語で出版しています。
地域の研究領域は東アジアという大きな地域である場合もあれば,鹿児島という地域に密着する場合もあります。新しいチームは鹿児島に密着する研究を始めます。プロジェクト名は「地域における知のネットワーク形成」です。わたくしたちは,日本は地域の集合体であり,世界もまた地域の集合体である,というフィロソフィーを視点とします。東京や大阪も地域であるという視点です。中央を頂点に一定の階層構造があるという,地域によくある固定した考えをすてることにしました。この固定観念に立つと,地域は小さなコピーとしてしか意識されず,よい地域とは「すぐれたコピー」ということになります。
地域は多様であるという視点(フィロソフィー)でみると,地域の事業者たちが営々と構築してきた取引のネットワークが見えてきます。ネットワークが形成される間に,多くの失敗した取引があります。失敗もまた事業者の「知」の肥やしです。取引に失敗したがゆえに,事業者の経営知が育まれる。わたくしたちはこれを「知のネットワーク形成」と呼びます。地域の中に,地域と地域の間に事業者がネットワークを形成しようとする努力とそのネットワークを分析する。これがわたくしたちの研究方法です。20人の地域事業者がひとり270分の講師として参加するロングラン・オムニバス講義「地域創生」(本学・地域創生学科)で学んだ,「発見」です。
特定の地域を調査する。人口構成・産業構造・行政の仕組みなど,調査により現状とこれまでの趨勢を知る。調査した資料をもとに。いくつかのコメントあるいは提言を付け加える。地域の研究あるいは比較研究は,ほとんどこのレベルの仕事に終わっていると考えます。地域の研究は,産業・農業を構成する組織,場合によっては行政・教育の組織などが組織間に形成している「取引」(「知」)のネットワークに立ち入り,その持続可能性を研究する,あるいはネットワークの芽を探るということでなければなりません。言うは易し。わたくしたちは誠実にこの課題にかかわります。
